【ゲーマーの尻】
レベル別「おしりの痛み」対策を考える
長時間ゲームをやりこんだ後、こう感じたことはありませんか?―――「おしりが痛い!」と。
目の痛みや肩こり・腰痛といったメジャーなお悩みに続き、実は多くのゲーマーが感じているこの痛み。
このページでは、ゲーマーが抱える「おしりの痛み」の原因と対策をレベル別にご紹介します。
ゲーマーあるある「おしりの痛み」
バウヒュッテが独自に実施したアンケート※では、約1,000人のゲーマーに「デスクワーク中に気になる体調不良」とたずねたところ、1/4が「おしりの痛みが気になる」と回答しています。
さらにその内訳をみてみると、大きく3タイプの「おしりが痛いゲーマー」がいることがわかりました。
- おしりの痛みだけ、または+下半身の不調を感じている
- →Lv.1『おしり・下半身ダル重ゲーマー』
- おしりの痛み+首や肩から足まで全身の不調を感じている
- →Lv.2『おしり・全身こりすぎゲーマー』
- しびれや痔など、おしりに強い痛みを伴う症状に悩んでいる
- →Lv.3『痔ゲーマー(坐骨神経痛ゲーマー)』
あなたは今、どのレベルにいますか?
ゲームなら通常、レベルが上がるごとに喜びを感じるところですが…「おしりの痛み」の場合はそうはいきません。すでにおしりに痛みを感じているゲーマーは、レベルを下げていく必要があります。
それでは、各レベルごとの原因と対策方法を見ていきましょう。
Lv.1『おしり・下半身ダル重ゲーマー』
長時間座り姿勢を続けることにより起こる、比較的軽度なおしりの痛みです。腰のダルさや、足の冷え・むくみを感じる場合もあります。ゲーマーに限らず、ほとんどの人に経験があるのではないでしょうか。
<原因>硬い座面におしりが圧迫されることによる痛み
座り姿勢のとき、おしりでは全体重を支えています。おしりに負荷が集中し、圧迫されることで痛みが生じるのです。さらに、圧迫されることで血行が悪くなると、足の冷えやむくみに繋がる場合もあります。
クッション性の乏しい場所へ座れば、おしりはより強く圧迫された状態になります。直に床へ座るロースタイルゲーマーや、硬い座面のチェアに座っている人、おしりの肉が薄い女性などは、圧迫による痛みを感じやすいと言えます。
<対策>クッションをチェアにもおしりにも装備する
圧迫が原因で痛みを感じている場合は、座る場所にクッション性をもたせることで、体圧を分散させたり、底付き感を軽減させたりすることが重要です。
後付けクッションを追加する
今座っているチェア、座面は硬くありませんか?座面が硬くておしりの痛みが気になる場合は、チェアに後付けクッションを追加することで楽になる場合があります。
ゲーマーであれば、ゲーミングチェア・座椅子を導入している人も多いかと思います。毎日長時間腰掛けるチェアは、最初はふかふかでも、徐々にへたりが出てきてしまうものです。後付けクッションを追加しようと思っても、座面がバケットシートのような特殊な形状をしているせいで、一般的なクッションではなかなかサイズ合わないというのが現状です。その場合は、ゲーミングチェア用に設計された「ゲーミング座布団」がオススメです。床に直で座る際も、通常の座布団として使用できます。
おしりの筋トレ
痩せ型の方や高齢の方、女性に多いのが、おしりの肉が薄いタイプです。おしりの筋肉=緩衝材が不足しているため、長時間座った時に痛みを感じやすくなります。筋トレを取り入れて、おしり自体のクッション性を向上しましょう。
●おしりの筋肉(大臀筋)に効くスクワット
- ① 足を肩幅より広めに開き、つま先をやや外側に向ける
- ② 腕をまっすぐ前に出し、肩の高さでキープする
- ③ 背筋を伸ばして立つ(基本姿勢)
- ④ 床と太ももが並行になるまで、3~5秒ほどかけてゆっくりとおしりを下げる
- ⑤ ゆっくりと膝を伸ばし、基本姿勢に戻る
- ⑥ ④~⑤を5回*2セット繰り返す
- → 慣れてきたら1セットあたりの回数を増やす
●ヒップブリッジ
- ① 膝を立てて仰向けに寝転び、足を肩幅よりやや広めに広く(基本姿勢)
- ② 足裏をしっかりと床につけた状態で、ゆっくりをおしりを上げる
- ③ 限界までおしりが上がったら、2秒程その状態をキープする
- ④ ゆっくりをおしりを下げて、基本姿勢に戻る
- ⑤ ②~④を15回*3セット繰り返す
- → 慣れてきたらお腹に重りを乗せ負荷を増やす
チェアの高さ(座面高)を調整する
座面の高さがあわないチェアに座っていると、お尻~太ももにかけての圧迫がより強くなります。低すぎた場合おしりの奥側に集中して負荷がかかり痛みが出やすくなったり、高すぎた場合太ももまで圧迫されて足の冷えやむくみが出やすくなったりする場合があるのです。
いま座っているチェアの背もたれにぴったり腰をつけて座り、確認してみてください。かかとが浮いてしまう、またはひざの位置が股関節の高さよりもかなり上に来てしまうのであれば、高さのあっていないチェアということになります。
特に、一般に広く売られているゲーミングチェアは海外製のものが多く、欧米人向けにサイズ設計されています。例えば、座面高45cmのチェアの適正身長はおおむね185cm程度です。平均的な日本人にとっては高すぎて、不安定な座り心地はゲームへの集中をも邪魔しかねません。
まずは、自分にとって最適なチェアの高さを把握しておきましょう。いま座っているチェアでの高さを合わせることが難しい場合は、日本人向けに設計された低座面仕様のチェアへの買い替えや、クッション・足置きなどの導入がおすすめです。
Lv.2『おしり・全身こりすぎゲーマー』
おしりの筋肉から波及し、下半身だけでなく全身に不調を感じるレベル。筋肉に疲労が蓄積しているので、ゲームの合間にちょっと休憩を挟む程度ではなかなか痛みが抜けにくいのが厄介なところです。
<原因>おしりの筋肉がこり固まることで感じる痛み
自分は姿勢がいいと自信を持っているゲーマーはどれくらいいるでしょうか。ゲームに熱中していると、ついつい前屈みになったり、逆に後ろにもたれて腰で座ったり、あぐらや足を組んでみたり、気がついたときには姿勢が崩れてしまっている…という人も多いはず。
長時間崩れた姿勢を続けていると、おしりの筋肉は不自然な形で過度な緊張状態に陥ります。こうしてこり固まったお尻の筋肉は、左右のバランスを崩し、骨盤の歪みを招きます。身体の中心で体幹をささえている骨盤が傾くことで、全身の筋肉が不自然にこわばり、おしり以外にも痛みや疲労感が生じる場合があるのです。
<対策>正しい姿勢とストレッチで筋肉のこりをケア
座り姿勢をとる時でも、私達は無意識のうちにおしりや腰の筋肉をつかい、エネルギーを消費しています。正しい姿勢で筋肉の疲労を最低限に抑え、凝り固まった筋肉はストレッチでほぐしてやりましょう。
そもそも”正しい姿勢”とは?
おしりを初めとする全身の筋肉に負担が掛かりにくい正しい姿勢のポイントは、上記の通りです。
肘や膝の角度が自然と90°になるようチェアの高さを調整し、深く腰掛けて背中がS字カーブを描くようになる姿勢が理想です。リラックスした状態で、無駄な力が入らないように座ります。
座椅子や床に直接座る場合は、上の図をベースに、下記2点を意識してください。
- ・座椅子やクッションなどを用いて、 腰が脚の位置より高い姿勢を保つ
- ・ 直角に近い角度に背もたれを調整し、もたれて猫背や反り腰を予防する
- 床にすわる場合は、壁などを利用してもたれる)
<関連記事>腰痛対策 正しい椅子の座り方
歪み・こりを解消するストレッチ
こり固まったおしりの筋肉をほぐすには、やはりストレッチが効果的です。おしりの筋肉を柔軟にし、骨盤の歪みをリセットすることで全身を整えます。
●大臀筋を伸ばすストレッチ
- ① 手と足を自然に伸ばした状態で、仰向けに寝転ぶ(基本姿勢)
- ② 右ひざを立て、伸ばしている左足のひざにかかとを乗せる
- ③ 左手で右ひざをかかえ、かかとが離れないよう注意しながらゆっくりと左へ倒す
- ④ おしりの筋肉が伸びているのを意識しつつ、30秒ほど姿勢をキープする
- ⑤ 両手を離して、基本姿勢に戻る
- ⑥ 左足も同様に、②~⑤を行う
●骨盤周りの筋肉を伸ばすストレッチ
- ① 両膝を立てて仰向けに寝転ぶ(基本姿勢)
- ② 足を組むようにして、右足首を左足の太ももに乗せる
- ③ 頭・肩甲骨が床から離れないよう注意しながら、左ひざを両手でかかえゆっくりと胸の方へ引き寄せる
- ④ 腰~太ももの筋肉が伸びているのを意識しつつ、15秒ほど姿勢をキープする
- ⑤ 両手を離し、基本姿勢に戻る
- ⑥ 反対の足も同様に②~⑤を行う
Lv.3『痔ゲーマー(坐骨神経痛ゲーマー)』
強い痛みを伴う深刻な症状に悩んでいる、おしりが痛いゲーマーの最高位。医師による適切な治療を受けつつ、ゲーム環境の見直しやケア方法を見直して、悪化・再発しないよう留意してください。
<原因>身体の歪みやうっ血など、複合的な負荷の蓄積
このレベルに達するまでには、Lv.1/2を経てきているはずです。圧迫による血行不良や筋肉の疲労など、様々な要因が積み重なることで、強い痛みを伴う症状に繋がる場合があります。ここでは、最初の項目で触れたアンケートで特に多かった「坐骨神経痛」と「痔」について、簡単に原因をみていきます。
坐骨神経痛
坐骨神経は、腰椎から伸びる神経と骨盤の中心に位置する仙骨から伸びる神経が合わさった、人体で最大・最長の末梢神経です。お尻~足の筋肉に脳からの指令を伝達を指令したり、痛みなどを感知する役割を果たします。
この坐骨神経が何らかの原因により圧迫されると、しびれや痛みなどが生じます。症状の出る場所や程度は人によって様々ですが、おしりや太ももの裏側に鋭い痛みを感じる人が多いようです。
骨盤の歪みにより仙骨周辺の筋肉が硬直した状態が慢性化すると、坐骨神経が圧迫され痛みが出ます。また、神経は血管に覆われているため、血行が悪くなると痛みが強くなる可能性もあります。悪い姿勢のまま座りっぱなしでゲームをしている場合、リスクが高くなると言えるでしょう。
痔
肛門は、内肛門括約筋と外肛門括約筋という二つの筋肉に取り囲まれています。ですが実は、この二つの括約筋だけでは肛門をぴったりと完全に閉じることは出来ません。毛細血管が網目状に集まってできた痔静脈叢(じじょうみゃくそう)と呼ばれる結合組織が、クッションのように隙間を埋めて肛門を閉じています。
強くいきんだり、お尻に負荷がかかることを続けていると、肛門周辺の血液循環が悪くなります。痔静脈叢がうっ血し、腫れあがってできるのが「いぼ痔」です。長時間座りっぱなしで作業をする人に多いのがこのタイプで、ゲーマーも注意が必要です。
痔にはその他にも、肛門側に傷ができる「切れ痔」、肛門周辺の化膿が悪化して膿のトンネルができる「痔ろう」があります。
<対策>痛みがあれば早めに受診し、日頃からセルフケアを取り入れる
このレベルにまでお尻の痛みが強くなってしまった場合は、専門機関を早々に受診することが重要です。痛みの原因や程度は人それぞれなので、医師による適切な処置や指導を受けましょう。ここではそれを踏まえた上で、痛みの予防や軽減に役立つとされる簡単なセルフケア方法をご紹介します。
身体をあたためる
一般的に、坐骨神経痛や痔の場合、身体を冷やすと痛みが増加すると言われています。筋肉や血管が収縮し、血行を悪くするためです。おしりなど脂肪の多い箇所は、自分で思っている以上に冷えている場合があります。
身体の冷えることは避け、特に下腹部や腰をあたためるよう意識してください。単純なことのように思えますが、日頃お風呂をシャワーですましている人は、40℃以下のぬるめのお湯に10分程つかる習慣をつけるのも効果的です。
座り姿勢と立ち姿勢を交互に取り入れる
長時間座りっぱなしでいると、たとえ正しい姿勢であっても、おしりへの負担は免れません。またずっと同じ姿勢を続けていると、注意力が散漫になり集中力が低下しやすくなるとも言われています。ゲームの合間に休憩を挟んで、座り姿勢と立ち姿勢を交互に取り入れましょう。
海外では、座り姿勢と立ち姿勢どちらにも対応する「スタンディングデスク」が定番化してきています。マウスの緻密な操作を必要とするゲームや集中してプレイしたいときは座って、操作性が簡単なゲームやお尻の痛みを感じたときは立つなど、ゲーム内容や状況に応じて自由に姿勢を切り替えることが可能です。
まとめ
ゲームに熱中していると、ついつい怠りがちになってしまう身体のケア。今回はゲーマーの尻に注目して、痛みの主な原因と対策についてみていきました。
最後に、この記事でご紹介した対策をまとめておきます。
- ・かたい場所に座るのは避け、クッションなどを活用する
- ・チェアの高さを調整し、正しい姿勢で座るよう意識する
- ・筋トレをしておしりの筋肉をつける
- ・ストレッチをして筋肉のこり、骨盤の歪みをケアする
- ・座り姿勢の合間に立ち姿勢を挟み、長時間同じ姿勢にならないよう心がける
- ・血流がよくなるよう、身体をあたためることを意識する
- ・坐骨神経痛や痔などの症状は、専門機関を受診し、適切な処置を受ける
日ごろから上記のことを心がければ、痛みを防いだり軽減したりすることが出来るでしょう。
ゲームのレベル上げとおしりの痛みのレベル下げを両立して、楽しいゲームライフを送るための参考となれば幸いです。